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第147回(2007.06.12)
顧客中心プロジェクトマネジメントと顧客PMO |
◆顧客は「なにかいいもの」を欲しがる
第140回で
顧客中心のプロジェクトマネジメント
という記事を書いた。今回は、この続き。
顧客中心プロジェクトマネジメントは顧客がプロジェクトを動かしていく仕組みづくりである。
上の記事に対していただいたコメントにもあるように、顧客はシステム開発に対して無関心であり、適当な対応をするという現実があり、このような仕組み作りは難しいという意見もあると思う。顧客がシステム開発に対して無関心であるというのはある意味で当たり前である。
顧客は自分たちのビジネスにとって役にたつ「何かいいもの」が欲しいのであって、システムに対してはそれ以上の関心はないと考えるべきだ。もちろん、その企業の体質とか、あるいは事業とITの密接さから、もう少し、深いコミットをする企業もあるが、基本的には情報システムはオーナーとしての調達であって、それ以上のものではない。
◆SIerからPMerへ
その中で、どのような形で顧客を中心にしてプロジェクトをまわす仕組みを作るかであるが、そんなに難しい話しではない。顧客のプロジェクトリーダーが全くいないというケースは少ないので、そのプロジェクトリーダーが顧客側のプロジェクトのマネジメントをきちんと行うようにベンダーが支援することだ。
これは、SIサービスとしての支援ということではない。また、顧客の事業の支援でもない。SIが今まで蓄積してきたノウハウに基づくプロジェクトマネジメントの支援である。その支援を行うために、有効な手段が、エクスターナルPMO(別名顧客PMO)である。エクスターナルPMOは
外部企業とのジョイント事業のためのPMO。特定の顧客とのビジネスをスムーズに進めるために、顧客と共同で設立するPMO
と定義される。要するに顧客側に、顧客とベンダーが一体になったようなPMO組織をつくり、そのPMO組織によって顧客側のプロジェクトマネジメントを支援すると同時に、ベンダー側のSIプロジェクト(顧客側のプロジェクトのサブプロジェクト)のマネジメントの支援を行うような仕組みである。
◆情けは人のためならず
上に述べたようにSIベンダーの役割はプロジェクトマネジメント、あるいは、PMOのノウハウの提供である。そのノウハウを提供することにより、顧客側のプロジェクトリーダーがスムーズに自分たちのプロジェクトを進行できるようになる。
これは、すなわち、SIベンダー自身のSIビジネスのスムーズさを約束するものである。実際に、最近、このような位置づけのPMOを作っているSIプロジェクトが増えてきている。
このようなスタイルはSI企業に限ったことではない。例えば、社内で設備投資をするようなプロジェクトでもまったく同じである。
あるいは、製品開発のプロジェクトにおいても、プロダクトマネジメントをサポートするようなPMO機能を作れば同じ図式を描くことができる。組織的にエクスターナルではないが、PMOによりビジネスプログラムのマネジメントを支援することによって、その一プロジェクトである製品開発プロジェクトがスムーズに進行できるという図式は同じである。
◆「Right project done right」のひとつの形
最近、「Right project done right」という考え方が普通になってきている。
この話は、ベンダー側社内の話しとしてもある。これは主としてビジネスとしての観点で、収益性が中心に正しいプロジェクトとして定義していく。
同時に、顧客とプロジェクトの間にもこの関係がある。要するに、顧客が迷走してプロジェクトがグチャグチャになるというのは、ベンダー側、つまり、「done
right」の領域で片付く問題ではない。「right project」かどうかが問題になるのだ。
つまり、顧客が正しくシステム調達プロジェクトと切り出して、意図をきちんと伝えることが不可欠なのだが、現在のところ、顧客のプロジェクトマネジメントはそこまで成熟していない。そこで、比較すると成熟しているベンダーがエクスターナルPMOという仕組みを介して、Right
Projectになるように調整をしていく。上に述べた仕組みというのは結局のところ、このような位置づけができる仕組みだといえる。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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