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第130回(2007.01.16)
コミットメントのプロセスはあるか? |
◆アカウンタビリティとレスポンシビリティ
戦略ノートの97回で、プロジェクトマネジメントにおけるアカウンタビリティとレスポンシビリティについて触れた。
日本語でいえば、両方とも「責任」である。しかし、微妙に違う。
このような責任概念はもともと企業経営の概念であるので、プロジェクトにおける議論をする前に、少し、一般的な説明をしておこう。
レスポンシビリティは、企業自身が負う内部的、「自己責任」のニュアンスで使われる言葉である。これに対して、アカウンタビリティは消費者、市民などから求められる「外部への責任」という意味で使われる言葉である。最近、アカウンタビリティが注目されるようになってきたのは、環境問題をはじめ、企業としての社会的な責任が問われるようになってきたためである。
◆プロジェクトマネジメントにおけるアカウンタビリティとレスポンシビリティ
プロジェクトマネジメントにおいても同様の概念がある。レスポンシビリティはプロジェクト内部のステークホルダに対する自己責任を持つことである。このために、例えば、プロジェクトマネジメントでは、RAMなどの手法を用いて、自己責任の分担を明確にするのだ。
PMBOK(R)のツールと技法を極める 第1回 RAM
アカウンタビリティそのものを扱う手法は存在しないが、コミュニケーションマネジメントなどではアカウンタビリティを確保する計画をすべきである。
◆アカウンタビリティは仕組みの問題、レスポンシビリティは人の問題
ここで注意しておきたいのは、レスポンシビリティは自己責任であり、個人の資質・モラルに関わる概念であるのに対して、アカウンタビリティは、システム・仕組み・組織などに関わる概念であることだ。その意味で、レスポンシビリティの確保はプロジェクトとして最低限のことはすべきだが、結局、その責任がきちんと果たされるかどうかは、個人の資質の問題であり、ある意味で、それ以上、どうしようもない。
しかし、アカウンタビリティについては、アカウンタビリティを確保するシステムを作る必要がある。従って、そのためのシステムとして、コミュニケーションマネジメントが極めて重要な役割を果たすのだ。
さて、では、プロジェクトの中でレスポンシビリティとアカウンタビリティがどのように機能するかについて考えてみよう。
◆それ以前の問題〜コミットメント
この問題を考える場合には、実はもうひとつ、重要な概念がある。それはコミットメントである。
コミットメントは仕事(作業)遂行の約束である。計画を作ることの重要な一面は、コミットメントである。プロジェクトにおいては、作業や仕事を、達成すべき目標を加えてプロジェクトマネジャーが定義し、メンバーに渡す。メンバーはそれを引き受ける。これがコミットメントである。
プロジェクトマネジャーの最も重要な管理仕事は、メンバー個々に必要な作業を割り当てて、作業方法を教育し、進行プロセスの管理をすることである。
さらに、メンバーにスキル的な未熟がある時は、作業方法を示することによって、教育をすることもプロジェクトマネジャーの管理業務の範疇である。
◆コミットメントのプロセスがあるか?
このように書くと当たり前だと思うかもしれないが、実は、このコミットメントのプロセスはあいまいになっていることが多い。ある意味で「あたりまえ」だと思うせいか、コミットメントを明確なプロセスで行うことをしない。これが、達成できない目標の設定になり、無責任の原因になっていることも少なくない。
ここで、目標について理解しておくべきことは、目標は達成すべきものであって、単なる口約束ではないことだ。口約束にしないためには、達成できるための方法(対策)を決める必要があることは明らかである。それが決まって初めて、達成すべき数値を含んだ目標ができるのだ。
言い換えると、この一連のプロセスがコミットメントであり、コミットメントがあるから、初めて、内部にしろ、外部にしろ、責任が生じる。
ところが現実にはこのプロセスがきちんと行われていない。目標を達成するための方法を明確にしないままで、目標の設定をしているケースが多い。これはプロジェクト内でもそうだし、プロジェクトそのものに対してもそうだ。「まるなげ」というのはこういう状況を言っている。
長くなってきたので、本題のレスポンシビリティとアカウンタビリティは次回。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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